静岡大学地域創造学環の古田采音です。
2025年1月13日、立教大学池袋キャンパスにて、SDGs実践発表会が開催されましたので、活動報告をさせて頂きます。
本報告会は、各地で行われているSDGs実践の活動を報告し、「協働活動」の意義や探求のあり方などを再考する目的で開催されました。
午前中は、
・「映画「若者は里山をめざす」上映会―映画監督とつながろう!」
・「キャリア支援ワークショップ“自分ブランドな生き方×ソーシャルグッド”を考えよう」
・「教員懇談会-総合の授業を“社会化”する改革のノウハウ」
上記3つのイベントが行われました。
私は映画「若者は里山をめざす」を視聴させて頂きました。埼玉県の消滅可能性都市No.1に指定された「東秩父村」を舞台に、村の再興に励む若者たちの姿が描かれた作品です。密着取材を通して、見ている私も「この後どう変わっていくのだろう?」と緊張したり、心躍ったりする作品でした。原村政樹監督もご登壇されましたが、私は本当に残念ながら時間の関係で映画の途中しか視聴出来ませんでした。
私がこの作品で印象に残っていたのは、「消滅可能性都市」といっても東秩父村の方々の世代を超えた繋がりがとても強く、活き活きとしてみえることです。作品中には移住してきた若者も登場しますが、年齢や出自関係なく皆が打ち解け合って、協働で活動していることが特徴的でした。
作品中に、「消滅可能性都市に指定された悔しさや焦りがあるが、村には脈々と先祖がいる重さがあり、それは安心感であり自己のアイデンティティ」という言葉や、「昔は川に橋をかけるのも住民でやったのに、今は行政が全部やってくれるから共同体意識が生まれにくい」といった、生の言葉がありました。村に暮らす一人ひとりに、村に住み続ける理由、人と繋がる理由があり、それらがまとまりとなって「地域を残す」活動となっているのだと考えました。ただ、その地域の特徴や人の考え方に寄り添った方法でなければ、地域のまとまりは生まれません。作品中で「ノゴンボウ」という農作物で地域おこしをしたいという若者に対して、「ノゴンボウを見ると、貧しかった頃を思い出す人もいる」「ノゴンボウは食感が苦手で自分では育てたいと思わない」という意見がありました。1つの物事でも、世代や個人によって時に大きく違いますが、それを多様な立場の人が尊重しているからこそ、村全体の繋がりが生まれているのだと感じました。
若者が、「やりたいこと」を懸命に、積極的に行うと共に暖かく受け入れる地域の方いて、生業である「竹縄」の作業や、村祭りの復活に活き活きと取り組み、進化し続ける村の姿がみられました。

▲映画上映会の様子
13:00からは、
「探求活動等の成果発表 ポスター・映像・ステージ発表会-探求活動を通じてつながろう!」
というイベントが開催されました。中高生を中心に、33団体が様々な探求活動のポスター発表を行いました。中高生の活動の1番の特徴は、1つの学校だけではなく、複数校が合同で探求活動を行っていることです。
出展した中学生は後日の感想で「参加型にしたり、ずっと説明したりするのではなくちょっとした冗談で面白くすることでつまらない、単調な発表になることを防ぐことが勉強になりました。」「ゲーム感覚で学べているのを見て、他人に伝えたいという意思がすごく伝わってきた」「お客様の満足度を投票形式で統計をとっていて自分たちもやりたいと思った」、
高校生は「現時点では、まだ改善が必要という結果にはなっていましたが、自分たちが思うものを形にする力が素晴らしいと思いました。」「実際ワークショップに取り組み、自分自身の性について深く考えるきっかけになったり、同性婚に対しての知識が増え、見方が変わった。」、大学生は「抑揚を付けながら大事なポイントをアピールしたり実際にある現物を見せながらの説明など伝える上での工夫が多く凝らされていた」「だた説明を行うのではなく、ワークショップという形をとり、SDGsを自分事としてとらえやすくしている点が良かった。また、他団体に協力を仰ぐことで連携面を強化している点も良かった。SDGs17項目すべてを考えさせてくれる良い活動だったと思う。」などと述べていました。
各グループが、何を課題だと捉えるのか、そのために自分たちの力で何が出来るのか、実践したことでどのような変化がみられたのかを、論理的に発表していました。中高生が自ら行動を起こし、自分の言葉で発表している点が素晴らしいと感じました。実践をすることによって、その経験値が物事を考える際の引き出しになるだけではなく、それを元に伝えられた言葉には重みが生まれ、地域課題に対しても説得力のある提言が出来るのだと思います。
発表にも各グループ工夫が見られ、実物を展示しているグループ、体験をできるグループ、ポスターに仕掛けがたくさんついたグループなど、目を引く発表がたくさんありました。みなさん、本当にお疲れ様でした。




▲ポスター発表の様子
14時30分からは、「異なる学校、異なる世代、異なる地域での協働活動の成果と可能性」をテーマに、パネルディスカッションが行われました。
パネリストと内容、勝手ながら私の感想も以下にまとめさせて頂きます。
さいたま市立大宮国際中等教育学校5年(高校2年)次 江田帆花様
色覚多様性に関する探求活動で実施した、小学生へ向けた体験授業や国際フェア2024での出展についてお話頂きました。私が江田さんのお話で興味深かった点は、色弱の方へのインタビューで、意外と「困っていることはあまりない」という声もあったということです。ただ、1つひとつは小さな違和感だとしても、自分が当たり前だと思っている感覚とは違う、別の感覚に触れることは、社会に存在する見えない障壁を、小さなものから取り除いていくための一助になるのだと考えます。
静岡大学地域創造学環3年次 古田采音
静岡県松崎町でコミュニティスペースの整備を行うフィールドワーク活動についてお話をさせて頂きました。松崎町での高校や地域再生プロジェクトの方々との協働活動から、自分自身が大きく支えられた経験をお話させて頂きました。
一般社団法人SGSG理事長、おかやまJKnote総合プロデューサー 野村泰介様
#おかやまJKnoteという、ジャスト高校生・ジュニア高校生たちが地域活動を行う事例についてお話して頂きました。「町のために動く」のではなく「町を使って自分たちが楽しむ」というお言葉がありました。常に自分が楽しむ姿勢があるから、地域に対しても持続的な効果を与え続けられるのではないかと考えました。
静岡県松崎町長 深澤準弥様
自治体側の事例として、松崎町の現状と取り組みについてお話して頂きました。様々な課題が絡み合った自治体で、一人ひとりが多様にどう生きるのかを大切にしているというお話もありました。私も一大学生として松崎町に関わらせて頂いているので、私のような外部からの存在を、町に多様性をもたらし、気付きを与えられる存在として価値を見いだしていただけたことが、本当にありがたく思います。
立教大学環境学部設置準備室・大学院社会デザイン研究科教授、日本環境教育学会理事、環境省・日中韓環境教育ネットワーク国内委員、令和 6 年度環境教育成果
指標有識者検討会座長、関東地方ESD活動支援センター企画運営委員
二ノ宮リムさち様
アクティブ・シティズンシップの定義や方法について、学術的な側面からお話をして頂きました。協働によって自己が社会に変化を与え、それが結果として自己の変容をもたらすという理論は、自分の経験を振り返っても、本当にその通りだと感じました。私が社会に対して良い変化を与えられているのかは自身がありませんが、自己変容はとても感じているので、社会への効果も、今後の活動でさらに磨きをかけていきたいです。
質疑応答では、「SDGsなどに興味を持ってくれない人には、どう接してどう広めていけばいいのか」という質問がありました。野村先生からは、「1/10000」で、一万人に言い続ければ、誰か1人には響くはずというご回答があり、二ノ宮先生からは、「まず3人から始めてみるといい」というご回答がありました。
パネルディスカッションは、私にとっても、自分の経験を整理して、今までの活動の意義や今後の活動の目的を考え直す、本当に良いきっかけとなりました。さらに、多くの方々の前でお話させて頂く機会は、自分の大切な経験値となりました。
ご参加頂いた皆さんにも、きっと、協働活動の意義やご自身の活動について再認識するきっかけになっていると良いと思います。


▲パネルディスカッションの様子
16:00 より、最後の企画「多世代グループワークショップ」が行われました。中学生、高校生、大学生、大人も混ざったグループを作成し、「中高生がやってみたいこと」を聞いて、それを企業や市民団体がどのように支援・協働していくことが出来るか考えました。
例えば私が参加したグループには、「大宮で星空を見たい」という意見に対して、「大宮のサッカーチームに協賛してもらって、ライトダウンイベントを行えるのでは?」という意見が得られました。世代も立場も違う人同士が交流することで、自分1人では絶対に持てないアイデアをたくさん得ることが出来ました。今後の活動で得られたものは、いつかふと思い出して、新たな視点のきっかけになるのではないでしょうか。今回お話出来た皆さんとも、何かのご縁になれれば幸いです。




▲ワークショップの様子
17:00からは、表彰式と閉会式が行われました。麻布大学教授の小玉敏也先生からの講評では、中高生が異なる学校で発表をしたこと、等身大の日常的な言葉で発表したことがとても良かったとのお話がありました。さらに、活動をこれで終わらせずに、今後も続けることが、地域への礼儀にもなるとの期待のお言葉も頂きました。
SDGs実践コンテストの受賞団体は、こちらをご覧下さい。
中口先生からは、「今後この発表会をSDGsの甲子園のような場所に」というお言葉がありました。SDGsの意識が高まる今、こうした場で発表・共有し、フィードバックを得られることによって、活動がさらに活発化し、社会への還元がされていくことと思います。こうした場が、持続可能な社会への取り組みを拡大していくきっかけとなることを願っています。
協働活動の意義が再認識されたと共に、それぞれ今後の活動に関して多くの意義があった発表会であったように思います。私も多様な立場の方とのお話を通して、自分自身を見つめ直す、本当に良い機会となりました。
本当にありがとうございました。

▲表彰式の様子